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日本の銀行が善玉ですか?

20021025

宇佐美 保

 建築業界の一端に携る企業を長年経営してきた私の身近な人は、最近、倒産の憂き目に会いました。

そして、住居は競売にかけられました。

若しも又借金をすれば、会社を維持できたかもしれません。

でも、建築関係のパイが小さくなってしまった(と言うよりも、本来のパイの大きさに戻ってしまった)今、其れに群がる建築業界の規模がバブル時の侭では、会社の明るい未来は見えないのです。

 

 なにが何でも、会社を潰すのは悪だと言って、今の経済構造を何とか維持しようとしていたら、日本の経済の構造は、時代遅れになってゆくだけです。

 

 又、別の電気機器製造会社を経営する友人に聞いて見ました。

“銀行なんか融資なんてしてくれないよ。

だって彼らには、新しい技術の重要性、将来性を評価する能力なんか全くないのだから、こっちがいくら自分の開発しようとしている製品の将来性を銀行の奴等に説明したって、奴等には科学的な知識も見解も全くないんだから、いわんやソフト関係なんて全く駄目さ。

 だから仕方ないから、銀行のリボルビングカードで必要な機材を買うんだよ。

その利率は、年率15%だよ。

こんな高利で、我々中小企業に金を回していて「中小企業には貸し渋りはしていません」なんて言ってるんだから酷い奴等だっていうの。”

 

 又、雑誌フォーブス(2002.12)の中で、ジャーナリストの須田慎一郎氏は、新生銀行のやり口を、非難しながら、“日本の銀行は、企業にとってドクターの役割を果たしてきた。企業の経営が悪化すると、メインバンクが人も金も送り込んで、ときには販売先まで見つけてくるような立て直しを行ってきたのだ。”と語っていますが、友人は憤慨して次のように言いました。

“寝ぼけ野郎もいいとこだね。銀行は、潰れそうな企業に人を送り込んだ後は、どんどんその会社に金を貸して、会社を借金で首が廻らないようにしてしまうんだよ。ゴーンさんが来る前の日産がそうじゃないか。興銀からかの銀行から来た石原俊が、日産を滅茶苦茶にしちゃったんじゃないか!フェアレディーZや、DATSUNでアメリカを席巻した片山氏を、石原は社史からも抹殺したようなとんでもない経営者だよ。(インターネットで石原氏を調べますと、「平成3429日勲一等旭日大綬章受章」出てきます。一体日本の業績等の評価基準はどうなっているのですか?)”

そして、又言いました。

“そごうを潰したのは誰だい?水島広夫だろ、彼だって興銀から来ているんだぞ。その時は、東京店(東京・有楽町)は赤字続きだったんだ。そして、そごうを借金漬けにして倒産に追い込んだ後は、そごうから巻き上げた膨大な資産だけは絶対に手放そうとしないんだぞ。

今の銀行幹部が、これら二人と全く違うと誰が思う。同じ穴の狢よ!

 

 なにしろ、UFJの寺西正司頭取は、「サッカーの最中に、突然『アメリカンフットボールなんだ』と言われると困惑する」と、竹中路線を批判しているのですから呆れてしまいます。

我々の大事な税金による公的資金を投入されながら、喩えをゲームに捉える不謹慎さはさて置き、銀行が国際業務を営む為には、国際ルールに則るのが当然ではないでしょうか?

アメリカで業務活動するなら、アメリカでの自己資本の算定方法に則れとアメリカ側が主張するのは当然ではないですか?

それなのに、アメリカのルールから逸脱した、分けの分からない「繰り延べ税金資産」の自己資本への組み入れ基準を日本だけ拡大適用して、8%を満足していると言い張っても、アメリカには通用しないでしょう。

寺西流で、サッカーを例えるなら、「日本の銀行サッカーでは、オフサイドルールも無く、ゴールマウスへのボールに対して、キーパー以外の選手までも手を使って阻止してもよいルールを採用している。そんなルールの日本式銀行サッカーをアメリカで行っては困る。」と、竹中大臣に釘を指したとしても当然でしょう。

 

 アメリカ式査定で自己資本を評価して、8%を満足出来ないのなら、日本の銀行はアメリカから退却して、その業務日本国内に制限するのが自然の理ではありませんか?

 

 それに、「繰り延べ税金資産」など分けの分からない資産で我々の眼をごまかさずに、もっと分かり易く、銀行の資産内容を顧客である我々に開示すべきではないですか。

ペイオフが2年延期になった分、自分の資産が、安全性の面以外にも、少しでも世の中に有効活用される銀行に預けたいものです。

その為には、資産内容のほかに、中小企業等への貸し出し状況なども開示して欲しいものです。

 

 ところが、日本証券経済研究所主任研究員の紺谷典子氏は、サンデー毎日(2002.10.27)の中で、「たとえ不良債権はあっても、銀行は生き残れる可能性のある企業を必死で支えてきた。企業にとって銀行は、破綻を防ぐダム。しかし、竹中大臣は、ダムを壊そうとしている。そうなれば失業率はうなぎ登りです。」と語っています。

彼女は、本気で銀行の善意を信じているのですか?

中小企業への貸し渋り対策としての、信用保証協会の保証による貸し出し金を、直ちに自行への返済金に巻き上げてしまったの銀行が、どうして、企業を支えて来たといえるのですか?

 

 百歩譲って、紺谷氏の言うように本来は「銀行は破綻を防ぐダム」であるべきかもしれません。

でも、そのダムには、ヘドロが溜まり過ぎてしまってして、もうダムの機能を果たしていないのだと思います。

 田中康夫長野県知事の言を待つまでもなく、「銀行の脱ダム宣言」をすべきではないでしょうか?

 

担保としては、「土地」しか評価できない銀行が、これから、東南アジア諸国の追随をも許さない新しい技術を携えて発展しようとする企業にどうやって支えることが出来るのですか!?

 私達は、これからの日本を支える新しい銀行の誕生を待ち育てるべきではありませんか。

 

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